〜どうぞ、よろしくお願いします。高橋さんは、生まれも育ちも小国の方だそうですが、ここでの仕事に就かれるまで、地元一筋なんですか?

高橋チーフ(以下=高):いえいえ。大学時代からの10年間は名古屋で過ごしました。ですから、就職も名古屋。水産関係の会社でサラリーマンをやっていました。短い期間でしたけど、企業の第一線で働いていたんです。水産業という地味な分野なのに、なかなか時代の流れを意識した会社で、特に小売に関しては力を入れていたので「顧客ニーズ」っていうのかな、物流のノウハウみたいなものは、ずいぶん学びましたね。


〜企業の第一線ということは、お給料もかなりあったでしょう・・・。どうして戻ってきちゃったんですか?

高:あのねえ…、長男だから!(笑)。本音で言うと、まだまだ田舎には帰りたくなかったんですよ。僕が戻ってきた昭和60年頃って、人口も減り始めて基幹産業の林業の低迷いちじるしい時期でしたから。当然、後継ぎをするつもりで帰ってきましたが(ご実家は食料品店と林業を兼務されていたそうです)、家の帳面を覗いたら、もう名古屋に帰った方がいいんじゃないかって、まじめに思っていました。今思えば、ちょうどその頃が『現在の小国』へとつながる「まちづくり」の起点となった時期だけど、まだまだ僕も20代の後半、あまりよくわかっていなかったんですね。正直な話、スキあらば逃げ出そうって感じでしたから・・・(苦笑)。


〜「まちづくり」のお話がでましたが、九州で「まちづくり・まちおこし」といえば『小国』という名前が必ず出てきます。簡単に・・・とは、いかないでしょうが、それってどういうことですか?

高:主に観光がベースの話に聞こえがちだけど、都市部の人たちがこういう山間部に求めるものって、きれいな水とか空気、人情みたいなものだと思うんです。受け入れサイドの僕たちは、きちっとそれに対応をすればいいんだと“従来は”考えていました。つまり、“田舎そのもの”で対応すればいいという認識だったんです。 「それって本当は違うんじゃないか」という疑問から、このまちの「まちづくり」は始まっていて、自分たちがもっている財産(具体的には杉など)を活かすには、ただ単にじっとしていても始まらないだろうということ。つまり、自分たちの都合だけではなくて、魅力を感じてくれる外の人たちの考え方さえも受け入れないと、本当の意味での「新しいまちづくり」にはならないでしょ・・という気運が生まれ始めました。どこの「まちづくり」にも言えるけど、持っている素材の素晴らしさは、もちろん大切。だけど、それを守っているのを言い訳に、自分たちの変化をあきらめてるんじゃないかということですね。


〜なるほど。お話がだんだん難しくなってきましたが、そういう町全体の動きの中に「道の駅」は、どういう形でつながってくるんですか?

高:かれこれ、20年ぐらい前のことですかね。もちろん当時は景気も悪くて、「まちづくり」を進める中で「若者の定住促進事業」だとか「過疎関係の補助」だとか、行政が先頭に立ってがんばらなきゃいけない時期でした。先ほどもあげたような、まちのポジティブな動きをリードする役割で、この施設ができたのがそもそもの始まりです。道の駅の供用が始まったのが14年前だから、それ以前の話ですね。来ていただいた事のある方はご存知でしょうが、なかなか田舎には似つかわしくないモダンな建物でしょ? ハードをつくることが100%正しいとは言わないし、おそらく従来の考え方だと、普通に在来工法で作っていたと思うんですよ。だけどここの場合は、建物に機能だけを求めたりはしませんでした。立派な杉(まちの素晴らしさ)が沢山あるのでそれを使うこと、それを都市部の新しい考え方・デザインなどを融合させていくこと。様々な点に気を配りながら、「まちづくり」の考えを反映した建物がつくられたんです。結果として、この建物をはじとする十数戸の施設ができていきますが、どの建物もそういう共通した考えをもとに作られています。必ずしも公共建築だけではなくて、企業やあるいは個人など、「まちづくり」に共感する人たちが、ひとつひとつの建物を生み出していきました。


〜この施設をとおして、地域を取り巻く人々の意識に変化が生まれたわけですね。

高:そういう風に言えますかね。もう少し詳しく言うと、やはり、これまでは外部の人たちに対して、ちょっと拒むような部分があったと思うんです。それが、建物を珍しがってマスコミが来る、噂を聞きつけて建築関係の人が来る、人が集まって地元の人たちとの交流が生まれる、せっかくだから宿泊をして貰おう、一度生まれた交流はもっと促進したい、といったふうに相互作用が始まります。ハードとはいいながら、やはり「まちづくり」の根幹には、それを支える「人づくり」が重要になってくるんですよね。 外部の人たちは、このまちに何かを求めて訪れるみたいですが、これはむしろ逆なんですよ。>>>>


●元気なリーダー高橋チーフ
●小国の町並み。お昼よりも「夜」が賑やかなんですって・・・。
●小国杉をふんだんに使った建物です。
●町の山あいに建つ「小国ドーム